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「うん」
関西訛なまりの特長のある呼び方で、彼はちよつと頭を下げた。それはお辞儀といふよりも、何か強談を持ちかけるといつた工合の、一種の身構への感じられる強きつい調子だつた。
と、呟き、房一に向つてしきりとうなづいていた。
ごろごろする石の上を下駄ばきでは歩きにくかつた。房一は川から上つたまゝの濡草履をはいているので速い。盛子は空からになつた追鮎箱を手にして後からついて行つた。
「さう。――いゝやうだ」
「あ、さう云へば」
犬は横へとびこんだ。だが、匂も嗅がず、草の中から頭を出して、房一の方をしきりと眺めながら同じ方向に歩いている。
二人は岸に着いた。
「今、あんたの便をしらべてみたがね」
云ふなり又思ひ出したやうに玄関へ上つて行つた。
その外から見れば屋根と築地塀だけのやうな家の前で、三人の男が立つてしきりと話していた。
「へえ、いえ」
房一は叫んだ。犬は房一の顔を見上げ、二三間走り、後がへりをし、それから急に葉の落ちた灌木の中にとびこんで行つた。がさがさやつて、ずつと先の路に出た。きよとんとし、時々匂ひを嗅いだ。