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    「おつ」

    「あゝ、さうか。ふうん」

    さう云ひたげに、練吉は近眼鏡の奥で切れの長い目をぱちぱちさせ、ちよつとあたりを見まはした。一種気楽げな表情がたちまちその顔に浮かんだ。

    「さう、カワラケ、カワラケ云ひなさんな」

    「あのう、笹井へ往診がございますが」

    と、案外冷静に云つた。

    房一の態度が穏かだつたので、相手はいくらか落ちついた。

    その時やつと、男は少しうなづいた。そして背中に負はれて出て行つた。

    「この人はちっと眠むがってるでな……」

    「わたしの方でも、もう一度こちらから上つて、お目にかかりたいと思つていたところなんですよ。――今日はこんな所で、じつさいいゝ案配でした」

    と、その小柄な身体から出るとはとても思へない、幅のある、濁だみ声で云つた。

    「チブスじゃないです。医者は何とか言っていたですが、まあ看病疲れですな。」

    「あなたは、多分――」

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